something more precious

10


「ありがと、シュウスケ。もう大丈夫だよ。」
ひとしきり泣き叫んだリョーマは目に涙を残しながら笑顔でシュウスケに言い、立ち上がった。
立ち上がった途端、ガクッとリョーマの身体が崩れた。
「リョーちゃん!!」
崩れたところをシュウスケが抱きとめたので地面にぶつかることはなかった。
【心配するな。無茶をしたからな、眠りについただけだ。】
どこからともなく声がした。この声は神の声だった。
「無茶とは?」
1番関心を持っていたイヌイが聞いた。
【私を押さえ込んでリマが出てくるのはひどく精神と体力を消耗する。だから回復をするために急激に眠りにつくから倒れるのだ。本来
私はリマが眠りにつくと表に出てこれないのだが、リマが私を押さえ込んだ時だけ少しの間だけならこうして話すことができる。さぁ、私
ももう眠りにつく。リマを休ませてやってくれ。】
「わかりました。テヅカ、一緒に来て。」
「ああ。」
リョーマを抱きとめたシュウスケがリョーマを抱き上げて部屋へ連れて行った。









―――――――おまえならリマを幸せにできるかもな









神がクニミツに向かって言った言葉だった。だが、その言葉は誰にも届かなかった。











































「・・・・・・・・ん。」
「気が付いたか?」
「え・・・・?」
目を覚ましたリョーマに声をかけたのはクニミツだった。
「なんでここにいるの?」
「フジにここにいろと言われた。」
「そう・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・。」
沈黙が訪れたが、それを破ったのはリョーマのほうだった。
「あの・・・・・、ごめんなさい。勝手に勘違いして恨んだりして・・・・。」
「いや、いい。気にしてない。」
そして再び沈黙が訪れた。だが、その沈黙はドアをたたく音によって消された。
「やっほー!おちびー!!目ぇ覚めた〜?」
「リョーちゃん大丈夫?」
「・・・・・・・・・。」
中に入ってきたのはエイジとシュウスケとアトベだった。
「すまねぇ!!リョーマ!!」
「?!?!」
いきなりアトベがリョーマに頭を下げたのでリョーマは驚いた。
「取り返しのつかないことをしたとわかってる。例えどんな理由があろうとお前から両親を奪ったことには変らねぇ。ほんとにすまなかっ
た!!」
「あのね、リョーちゃん。アトベね、最初はどうにかしてリョーちゃんを振り向かせようとがんばってたんだって。でも、切羽詰ってた時に
、アトベのお父さん、ヒョウテイ国の国王様ね、に、エチゼン国の王と王妃を殺せば姫が手にはいると言われたんだって。最初は渋って
たらしいんだけど、命令されちゃったらしいんだ。その時にテヅカの名前を使って殺すよう言われたんだ。そうすれば姫はテヅカを憎む
、エチゼン国の国王と王妃は亡き者にできる、と思ったんだろうね。でも、アトベのしたことは結果的にリョーちゃんを悲しませることにな
ったし、リョーちゃんのお父さんとお母さんをこの世から消してしまった。それは許されないことだけど・・・。」
「わかってる。」
シュウスケがリョーマに説明してるときにリョーマが話をさえぎった。
「わかってるよ。この人とは結構長い付き合いだから、この人がどんな人かぐらいわかるよ。でも、皇太子のこともわかる。」
「えっ?」
いきなり自分のことが出てきてクニミツは驚いた。
「おちびー、どーいうことー?」
「俺の父様と母様が皇太子の両親と友達なんだ。だから、皇太子のことは俺の両親からよく聞いてたんだ。それ聞いて、すっごくいい人
だなって思って、まだ会ったことなかったけど、そんな人となら結婚してもいいなって思ってたんだ。」
「はっ?!」
続いての驚嘆だった。
「でも、皇太子が俺の両親を殺した犯人だとわかってものすごく裏切られた気持ちになった。だから、この人だけは許さないって思った
。でも、ここに来てシュウスケとかエイジとか他の人たちを見てるとだんだんわからなくなってきた。ほんとうにそんなひどいことをする
人なんだろうかって。そんな時に、この人が来て、真実がわかったって訳。でも、最初は信じられなかったよ。こんな俺様の人が本当に
人殺しなんてするのかってね。でも、許してあげる。」
「本当か?」
「うん。だって、国王様に言われたんでしょ?やったのはあんただけどさ。いつまでもグチグチしてたら父様と母様に怒られるよ。本当の
こともわかったし。でも、俺のことはあきらめてね。トモダチならいいよ。」
「ああ、そんな贅沢はいわねぇ。サンキュー、リョーマ。」
と、アトベは少し笑って言った。










































「さぁてっと、陛下のとこに行かないと。」
ん〜っと伸びをしてリョーマが言った。
「待て。」
扉へと歩き出したリョーマに向かってクニミツが言った。
「何?」
「姫。好きだ。」
「はぁ?!」
「俺は姫が好きだ。」

(((普通こんなとこで言うか?!!?!!)))

その場にはリョーマはもちろん、シュウスケとエイジがいた。その時、3人が思ったことは一緒だった。ちなみにアトベはさっきオシタリ達
のもとへ戻っていた。
「姫、返事は?」
「ヤダ。」
「なぜだ?」
「俺があんたのことを嫌いだからだよ。じゃ、俺陛下のとこに行くから。」
そのままドアから出て行こうとしたときに振り返り、子悪魔的な笑みを浮かべて言った。
「悔しかったら、俺を落としてみな。」
そして部屋から出て行った。
「ああ!リョーちゃん待って!!」
「おちび!!」
リョーマが出て行くまで唖然としていた2人が急いでリョーマを追いかけた。
残ったクニミツは笑顔で
「絶対に落としてみせる。」
と決意を固めていた。







出て行ったリョーマの顔はほんのり赤く染まり、笑顔を浮かべていた。



――――もう落ちてるんだけどね










































その後、クニハルとアヤナに真実を話し、ヒョウテイ国の国王は辞退させられ、王子であったケイゴが国王の座に就いた。
それから、クニミツのリョーマに対してのアタックが始まり、「俺に剣で勝てたら考えてあげてもいいよ。」と言われ、勝負したところ完敗。
他の7人も勝負を挑んだが、完敗。その後、もう一度、鍛えなおし、リョーマに勝負を挑むことが習慣となっていった。










































そして2年後―――

ついに、クニミツがリョーマに勝つことができ、正式に結婚を申し込んだ。答えはYES。
そして、結婚の時、自分の身体にいた神を天に返すために神楽を舞った。その舞は、他の者を寄せ付けない神々しいものがあり、また
とても美しかった。









『今までありがとう。』

【幸せになれよ。】

『大丈夫。だって、あんたが認めてくれた人じゃん。』

【気付いていたか。】

『それだけだけどね。この身体のお陰で辛いこともあったけど、そのお陰で本当に信頼できる人たちが誰かわかった。初めて会う人に
は軽蔑されるんじゃないかといつも不安だった。だって、俺は人とは違うから。実際軽蔑されたこともあった。けど、ここにいる人たちは
そんな人たちじゃない。それに、あんたがいて助かった時とか嬉しかったときもあったからね。感謝してるよ、今となっては。』

【リマが悲しんでるとはわかっていたが、私にはどうすることもできなかった。すまなかった。だから、せめてお前が本当に幸せになれる
人のところに嫁ぐまで見守ってやろうと思ったんだ。】

『うん。ありがとう。』

【じゃあ、幸せにな。】

『また、いつか会いたいよ。』

【私はいつでもリマを見守っているよ。】







そして、舞が終了した。舞終ったリョーマの頬には一筋の涙があった。

そして、クニミツのもとに行き、笑顔で言った。




「俺の本当の名前はリマって言うんだ。よろしく。」













そして、2人は永遠の愛を誓い、幸せに暮らした。



























――――――――あいつを見守っていてくれてありがとう

――――――――本当に感謝しているわ ほらあんなに幸せそうにして

――――――――あいつは本当に良い娘だ お前達が大切に育てたからだと私は思っている 胸を張っていていいと思うぞ

――――――――ああ あいつは俺たちの自慢の娘だ なぁ

――――――――ええ あなた




END